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書評

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評価


0 投げ銭:


    ★ 総合評価:
      星平均:
   ★★ タイトル:
    ★ キャラクターの魅力:
      書き出し:
    ★ 中盤:
    ★ 終盤・結末:
    ★ 読みやすさ・リズム:
    ★ 文体の美しさ・描写力:
    ★ 感動(涙):

総評

現時点では、小説として成り立っていないように感じます。


タイトル・あらすじ

1.タイトルの良かった点 「魔法をかけてほしいですか?」という問いかけは、つい反応して手に取る人がいそうで良いですね。 2.タイトルの評価が低かった点 三点あります。 一点目はインパクトが弱いこと。今、本屋の棚には「人に好かれる〇〇の魔法」「愛される秘密」といったタイトルの本が溢れており、その中に埋没してしまうのでは。 二点目。タイトルとは「内容を端的にかつ象徴的に示すもの」だと思いますが、本作の場合は内容とタイトルにズレがないでしょうか。 魔法の内容は「誰からも好かれる」ではなく「相手が求めている理想の人物になる」と書かれています。 例えば、主人公が日本人全員に会えたとする。その場合、前者は「1億2670万に好かれる男」、後者は(多少魔法にかからない人がいるとして)「1億人の理想の男になる」と表現できるかと思います。数字もそうですが、言葉から受けとるイメージに違いがありますよね?これが、「タイトルと内容が違うなあ」と感じた点です。 三点目です。このタイトルは、読者がある程度イメージを膨らませられる部分(例えば「自分に自信のない主人公の人生が魔法で変わっていくのかな」)と、謎の部分(「魔法って?」「どう変わるの?」)のバランスで成り立っています。 この形で提示をした以上、ストーリーの中で「よい意味でのイメージの裏切り」ないしは「謎が解けたスッキリ感」「主人公の変化に対しての感動」を喚起する必要があると思いますが、それに至らない。タイトルで引っ張ったわりにストーリーで回収できていないため、残尿感があります。


ストーリー・設定

私は本作を「主人公が弱さ、脆さを含めた『本当の自分』を仮面で隠していたことに気づき、素顔をさらけ出して歩き出す物語』と捉えました。 これを前提として、ストーリー・設定の気になった点を書きます。 (1)視点が多すぎる 「一人称多視点」(一人称で複数の語り手)でストーリーが進んでいます。 これ、かなり高度な技法をですが、様々な人物の仮面や葛藤を表現でき、話に広がりが出る/主人公と友人ユーマの心の変化を促すため、より多くの人との出会いがあるとよい。 こういうメリットがありこの技法をとったのかな、と推測ました(全く違うかもしれませんが)。 しかし結果的に、ひとり一人の心理描写が浅い/なぜコレが必要だったのか謎、というエピソードが多い/物語の中心が誰なのか分かりにくい/コロコロ視点が変わるので「今、何の話?」と混乱する など、弊害が多くなっていると感じます。 (2)設定に説得力がない、ストーリー展開に無理がある。 ※私自身の頭を整理するためにプロットを別紙にまとめました。このページには添付できないので、しるし書店に出品します。 このページには記述式で、その一部を書いています ●主人公が3年間引きこもり →なぜ、彼は引きこもったのか? その理由は終盤で明かされています。”小学校時代の母の病気、母を心配するあまり心の内を明かせなくなったゆえに、心にしまいこんだ『たくさんの辛い事』がのしかり、部屋から出なくなった”と。 しかし、『たくさんの辛い事』が何だったのかは最後まで語られていません。 この終盤を読む限りは、彼自身、気づかない内に心の容量がオーバーしていて、ドアを開けなくなった、次の日も、その次の日も→結果3年間 と感じられます。 一方で序盤では「ある日、外に出ないことを決めた」「それをユーマに宣言した」旨の記述があります。 =「今日から外に出ないぞ!」と決めたきっかけがあるはずですが、それも謎につつまれたままであります。 ●引きこもりをしている間にどう過ごし、何が起こったのか。 冒頭で「ネットで誰も見たことがない世界を作り上げていくんだ。僕ものそ一員だ。」「世界を変えるのは僕たちだ。」と誇らしげに語った主人公ですが 3年後の彼からは「”くまなくネットの情報を網羅ししている”という割に佐賀国独立たるビッグニュースを知って驚くタイミングは世間と一緒」「ぼんやりとネットサーフィンをしている」印象を受けます。 当初は彼が、ネット上で何らかの活動(ハッカーとまではいいませんが、ネット上のグループの一員として声をあげているとか、仮想通貨やレターポットに参加。又は5Chやヤフコメに書きこみまくり、世界を作り上げている気分になっていた)を試みたものの、そこから何も見いだせなかったのか。 はたまた、言っていることとやっていることが違い、3年間ネット空間を目的なく泳ぎ続けたのか。 彼がどのように過ごしたのか日常の風景が描かれていないので、彼の葛藤が響いてきません。 ●外に出るきっかけと動機 主人公が魔法をかけてくれ、と友人ユーマに言うきっかけは 佐賀国独立を同年代のアイドルが宣言したこと。 このトリッキーな設定は、 ・分かりやすく、日本と佐賀国の情勢を示す (いきなり”中国は今では佐賀からの輸入品が手にに入らないと困る”と書かれても読む方は混乱するばかりです。) ・外に出た主人公が、佐賀国と関わっていくストーリー であれば効いてくる余地があると思うのですが、本作では戸惑いとツッコミしか浮かんできません。 同様に主人公が家族と向き合うきっかけとして、”牛の形をした悪魔or神"及び佐賀国を主導するリサとの対面が描かれていますが 佐賀国界隈は、「主人公が勇気を出して動く大事なきっかけのための、とってつけたような飛び道具」として使われています。 もっと身近な人間関係、体温を感じる出来事により、主人公の心が揺さぶられる情景を見せてほしいです。 佐賀国そのもののアイデアは、万城目学氏「プリンセス・トヨトミ」の大阪国が浮かんでしまうものの、興味を惹かれました。 別の話として書いていただくのも、よいかもしれません。 ●主人公が外に出た後のストーリー 佐賀国に大きく心揺さぶられ、引きこもり中も政治に関心があるように見受けられる主人公。 加えて魔法は「亡くなった人を生き返っているように見せる」こともできるほど、強力なもののようです(終盤で判明)。 この設定であれば、主人公が外に出た後は政治、ビジネスと舞台を広げていくのかな と思いきや、なし崩し的にマックでアルバイトをはじめ、ストーリーは恋愛に突入します。 「主人公って、モテたかったの???」とこの辺りで、彼が何をしたかったのか、何を欲しい人なのか、全くつかめなくなります。 そして、次の章から、主人公とは別の女性たちの視点で主に恋愛や恋愛観が描かれます。ここに至り、ストーリーが破綻したように感じます。(理由は後述) ●ユーマが命をかけて魔法をかけた動機 ユーマは、魔法をかけると自分の寿命が削られることを秘密に、主人公に魔法をかけます。 しかも3回。 いわば「無償の愛」。 この理由を読者が納得するかどうかは、ストーリー上、最も重要なポイントです。 ずっと、自分は容姿でモテているだけで、中身は誰も見てくれていない。 その孤独を強烈に感じたユーマに、主人公は声をかけます。 「ユーマ、大変だな。気にすんなよ」 この一言が、ユーマが命をかけるほど、主人公を好きになった瞬間でした。 ・・・・・いやいやいやいや。 これは無理がありすぎませんか佐藤さん。 まず、ユーマの己を理解してほしい渇望、強烈な孤独のバックボーンが1ミリも描かれていません。 (おそらく「(外国人の?)父の不在」「親子」が影響しているのではないかと思われますが) さらに、主人公は(物語冒頭の)現在の時点で、ユーマを「すべてが輝いてみえる」「モテモテ」と憧れの目で評しており 声をかけた中学生時代も同じ認識だったと思われます。 「ユーマ、モテすぎて大変だな~」位は羨ましさを交えて言ったとしても ユーマの孤独感を理解していない以上、「気にすんなよ」という言葉は出てこないはずです。 要は、主人公が大事なところでキャラ変しています。 魔法に関しては、もう一点。 友里香に対し、3回のうち1回魔法をつかっています。 主人公が友里香さんと関わり、友里香さんが死のうとした。それを阻止するためのようですが(ユーマが責任をとった) 他2回のの魔法に比べこの魔法の必要性、というより、友里香を出した必要性が分からず、魔法に対する印象が薄味になりました。 ●主人公のお父さんは?? **************** これ以上長いと読むのもお疲れになると思いますので、まとめます。 「ストーリーの破綻」と書きました。その理由を私なりに推測します。 この物語で書きたいことは (1)主人公が弱さ、脆さを含めたを「本当の自分」を仮面で隠していたことに気づき、素顔をさらけ出して歩き出す結末 (2)部屋に閉じこもっていた主人公を連れ出す友人こそが、実は心を閉じていた (3)人の理想とは様々であり、ひとりの人間が万人の理想どおりにはなれない。なろうとすれば、自分を見失ってしまう。 この3点かと。普遍的なテーマで誰しもが思い当たる点があること、(3)で「理想の人=自分をダメにする人を望んでいることもある」という点は、心に刺さる方も多いのではないかと思います。 しかし、作者が書きたいことを「主人公(とユーマ))に言わせるため」の「出来事や人物」を前後の脈絡なく出現させたことが、読み手に話が通じない状態=ストーリーの破綻に繋がったのではないでしょうか。 閉じた場から外界へ踏み出すシンボルとして「引きこもり」は分かりやすい設定です。 ですが、本作でそれ以外に、「主人公が引きこもりでなければならなかった」理由は何でしょう。 理想の人、と聞けば「恋愛」が思い浮かびやすい。 ですが、「複数の女性の視点で語る恋愛」の設定にしたことで、ストーリーが煩雑になっていないでしょうか。 内容もドラマでよく見かける「うまくいかない女性の恋愛事情」ネタのように感じました。 男性の作家さんが女性の視点で恋愛を描く場合、その分野に作家の強い関心や心の動きがあった/女性キャラクターになりきれる表現力がある/圧倒的な筆力がある いずれが必要だと思われます。プロでもほぼ見かけないこの技法を、あえて取る必要はあるでしょうか。 推敲していただき、「何がなんでも、これにする必要はなかった」という点があれば、思いきった設定変更と視点(=語り手を誰にするか)の変更もありかと思います。


キャラクターの魅力

全般的にキャラクターを描けていないので、魅力が伝わりませんでした。 ユーマは、もっと掘り下げるか、毒舌キャラなどの設定にすると、イキイキしそうな気はします。 主要人物はもっと少なくして、ひとり一人を丁寧に描く方がよいのでは。 補足ですが、人物名は、画数の多い漢字は使わない方がよいです。 目が疲れる、覚えにくい、とデメリットが大きいため。 キャラクターの輪郭がハッキリしたら、そのキャラクターに合った、画数の少ない、日本人名の中で多すぎず珍しすぎない名前がオススメです。


書き出し

●書き出し 誰とも知らない人物のひとりごと 「引きこもりなんて誰が好き好んですると思う?~とにかく僕を部屋から出そうなんてことは~つまり無理だってことさ・・・」(6行たっぷり)から始まる書き出しは、ここで本を閉じられるリスク大です。 ●序盤・中盤 序盤:主人公が魔法をかけられ、外に出る 中盤:女性達の話 については「ストーリー・設定」欄で書いています。


終盤・結末

・おばあちゃんとお母さんの今までの関係、主人公とおばあちゃんの会話をもっと書き込んだ方がよいのでは。せっかくの山場がサッと過ぎさり、読み手の感情がうごきにくい。 ・「おまけ」の内容は本編で描き切った方がよい。


読むのをやめたくなった箇所1

冒頭


省いたほうが良い箇所

・女性編はほぼ省いた方がいいと思いますが、特に白濱薫編、伊都奈編 ・佐賀国関係(ただし、メインのストーリーで絡ませるなら使えるかもしれません) ・章をかなり細かく分けていますが、この区分は不要。今の設定のままいくなら、その章の主役名で分けるだけでよいと思います。


伏線の使い方

・伏線の回収と思われる「実はおばあちゃんは既にに亡くなっていた(魔法を使って生きているように見えた」は、伏線が機能しきれていない(おや?と思わせる部分が弱い、理想の人になる魔法でそこまでできるという伏線の記述がない)ので、おしい。 ・実はユーマが寿命を削っていた点については「ストーリー・設定」欄で書いています。


読みやすさ・リズム

じっくり読もうとしても、ざっと全体を一読しようとしても、中々、話が頭に入ってきませんでした。 一番の原因は、物語の大半が、会話か心理描写であること。 バックボーン、情景、間、どんな人物なのか理解するための情報など、ほぼ抜け落ちていいます。 映画を見るときに。セリフ以外にも私たちは画面から、多くの情報を得ていますよね。 登場人物が見ている風景。吹いている風。音。間。コーヒーを飲み終わったとき、カップをそっと置くのか乱暴に置く人なのか。歩き方は?表情などなどなど。 小説はこれらを言葉で表現しなければいけない。それはとても大変なことだなと思います。 本作がそのまま映画になったら、色のない画面に現れた登場人物が延々と会話しているか、よく知らない誰かの「心の独り言」を聞かされる。 そんなイメージです。 柳佐さんの頭の中で分かっていることは、読み手は表現していただかないと伝わらないので、それを見せてください。 会話で非常に気になったのが「・・・・・・」の多用です。おそらく、日常の会話に近い形する意図だと思いますが、これはドラマの台本に近いですね。 原則は使わない方がよいと思います。読みにくいこともありますが、せっかくの小説の印象が薄く軽くなります。例えば、「・・・・・・」を”困惑”の意味で使っているなら相応の、言葉での表現方法があると思います。 この「・・・・・・」&「!」&心の声の多用で、拷問に近かったのが(笑) P.100~の太一と友里香の会話でした。


参考になりそうなお勧め書

・家族だから言えないこと、過去の痛み「空中庭園(角田光代)」/キャラクターの書き分け・伏線回収「マリアビートル(伊坂 幸太郎)」/情景の美しさ・心の動き「ゼロの焦点」「砂の器」(松本清張)/顔を出さないのに気配を感じさせる人物の描き方 吉行準之助(本のタイトルは追って)


心に残った一文

・さっきまで、誰もいなかった寂しい校庭にいるときよりも、沢山の知らない子供たちに囲まれているときの方が、余計に孤独を感じた(P198) ・裏側には、例の力の強い人がいて、僕の心を、真っ黒な手で握り込んで離さない。(P14)


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この本をより良くするためのアドバイス

「ストーリー・設定」欄などをご覧ください。また、一度「冷めた読者」に成りきって本作を読んでいただくと、発見があるかもしれません。


冗長

・ユーマが主人公に魔法を使った理由 ・主要人物(主人公、主人公の家族、ユーマ)の背景 ・ユーマが魔法使いになった時の描写、かけてくれた魔法使いの描写がないのは端折りすぎ


作家にメッセージ

このプロジェクトが始動するにあたり、柳佐さんの、飛び込む力、読み手と書き手を繋げるアイデア、進捗を報告する際の、相手が何を知りたいかを察する想像力、細やかさを拝見して、すごい方だなと思いました。 それは、小説家にも必要なものであると思いますので、ぜひ発揮していただけたらと祈っております。



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