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書評

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作品名

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評価


0 投げ銭:


  ★★★ 総合評価:
      星平均:
  ★★★ タイトル:
  ★★★ キャラクターの魅力:
  ★★★ 書き出し:
  ★★★ 中盤:
  ★★★ 文体の美しさ・描写力:
  ★★★ 喜び、満足感、幸福感:
   ★★ 感動(涙):

総評

上手いけれどもテーマの掘り下げ不足でした


タイトル・あらすじ

設定が頭に入りやすい良いタイトルだと思います


ストーリー・設定

似た設定の作品はよく聞くので、設定自体は普通です。


キャラクターの魅力

読みながら「この人だったらきっとこう思うんだろうな」という風に考えることが出来たので、主人公のキャラ付けは多分成功しています。 周囲を人間性ではなく、勉強という分かりやすい形で屈服させたからなのか、真臼はとにかく「わかりやすいもの」へのこだわりが強いですね。 その裏返しとして、「わかりにくいもの」、たとえば人間性などについては二の次と考えてしまっているように見えます。その象徴的な場面が娘の加奈子に万年筆を買い与えるところです。 真臼は「一流の大人になるために万年筆が必要である」と言っていますが、彼の分かる範囲の一流の大人は「困難を金と権力と実力で捻じ伏せる大人」であって、万年筆の芸術性や人の機微を理解する大人ではないわけです。 それに対して娘は父の顔色を窺いながら、値段が真ん中ぐらいのポップな柄の万年筆を選ぶわけです。 娘がそれを選んだ理由を一切考えずに、万年筆を買ったことそのものに対して満足げなのがとても真臼"らしい"と思いました。彼を成功まで導いた『一流の大人哲学』が、皮肉にも娘との断絶に繋がるわけですね。面白かったです。


書き出し

ちょうど読むのがやや面倒になったぐらいで新しい設定の説明が入って、飽きずに読めました。


終盤・結末

綺麗に纏まっていると思いますが、個人的には好きじゃないです。


読むのをやめたくなった箇所1

特にありませんでした。


読みやすさ・リズム

読みやすかったです。


描写

読んでて引っかかりがない時点で文章力は相当高いと思いました。無駄なことを書いていない。 逆にこれ以上高くしてしまうと、それは癖が強すぎるのレベルになってしまってマニアしか読まなくなるので、ちょうどいいと思います。


参考になりそうなお勧め書

本ではないのですが「ニーア・オートマタ」というゲームは人の死から何を受け取るか、という部分が面白かったです。


あなたはこの本をどんな人に勧めたいですか?

読みやすいので、久々に読書したいけどキツいのはちょっと…という人に読んでもらいたいです。


この本をより良くするためのアドバイス

この物語は『登場人物に大きな欠陥を付けて、それを解決することをオチにする』という方式で作られていて、この物語に掲げられたテーマは『家族愛』『家族と向き合う』『人を理解する』だと思いました。 しかし、それだとすると娘が父親に向き合ってないんですね。彼女のやったことは「父親に自分の命を人質にして無理矢理言うことを聞かせた」にすぎないわけで恐喝ではないかと。根本的に、親と自殺以外の方法で向き合っている部分が見えなかったのが消化不良でした。 二人が生き返ったあとでは、父の『形あるもの以外には興味が無い』という欠点と、娘の『将来の夢』という問題はまだ解決していないはずなんですよ。 だとすると、必ず討論が一回挟まれるわけで、そこで初めて父が娘の素直な気持ちを正面から聞いて、自分の考える『一流の大人』像が揺らぎかけて、そこで父親は自分の母に向き合っていなかったことを想い返し……と。こんな流れがあると予測出来るのですが、こういう面白そうな流れが全部消し飛んでるのはもったいないなと。 あと、これはあまり物語の面白さに直接関係ないんですけれども、生き返らせる先を自由に選べてしまうと、矢沢栄吉とか死ななくなりません?絶対に命を投げ捨てるファンが出るだろうし。 それと自殺した人間って世を儚んで死ぬから、ドナーカードみたいな感じで、生き返らせないでカードとかありそうな気がします。


冗長

僕のこの作品への評価は『上手いと思うけど、あまり好きじゃない』です。多分、これは個人的な問題です。「酢豚にパイナップルが入っているのが好きじゃない」とかそういうレベルの。 僕は『自殺』という行為が人の心にさざなみを立てるのは、それが無意味かつ取り返しのつかないものだからだと思っています。 「死」そのものには意味がなくて、そこに意味を見出すのは残された人間です。残された人間はせめてその「死」が無意味でなくなるように、何か影響を与えられようとすると。そうじゃないと何か前向きになれないじゃないですか。やるせないというか、心の空虚が埋まらないというか。 だから、僕は娘が死んだあとの展開は、主人公の考え方が大きく変わって、自殺した娘のような子を今後生み出さないように悲しみを抱えながらも、路上で詩を売ってる人間に対して優しくすることで、娘への償いをするとか、そういうやつだと思ってたんです。 人の気持ちの機微に気付くようになったけれども、それを気付かせてくれた娘はもういない、的なものだと虚無くて良いなあと。 でも、この話だと主人公は娘を失った心の空虚を、数ページ後に娘を生き返らせることで満たしちゃうんですよね。 それはたとえて言うなら「豚肉が無いからチャリで10分かけて豚肉を買ってきました」みたいなもので、個人的にそれは物語として直接的で美しくないなと。あっさりしすぎなうえに解決法があまり面白くないです。 これが父親が二度と生き返らないとかだったら「不器用な父親で娘のことは相変わらず理解出来ないけれども、それでも娘の幸せを願って自殺する」みたいに考えられたんですけれども。 娘も父親も生き返ってしまうと「自殺の虚しさ故の美しさ」が台無しになってるなと思いましたが、そう思うのはきっと僕がハッピーエンドよりも少し考えさせるエンドの方が好きだからです。


作家にメッセージ

個人的に物語展開に引っかかるところはありましたが、構成が綺麗にまとまっていて、とてもレベルが高い作品でした。また読みたいです。



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